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失われし音を求めて
「ショーシャンクの空に」という映画でとても印象的なシーンがあります。
囚人である主人公がゲリラ的に刑務所内の放送でモーツアルトを流すところです。
彼はその行為によって懲罰を受けることを判っていながらあえてやったのです。
人は音楽無しでも生きてはいける。でもそんなものは人生と呼ぶに値しない。
ということなのではないでしょうか。

日々オーディオの調整に思い悩む人々もこういう心性に因っているのだと思います。
ただ問題なのはよりよい音で、ということなのでしょうね。

では良い音とは何なのでしょうか?

それこそ答える人の数だけ見解が生じることでしょう。たとえ同じ様な見解であってもより細かく検討してみると全く違う要素で構成された見解であったという帰結も容易に想像できます。

良い音とはひとそれぞれである。

確かにそうかもしれません。ただ自分にとって良い音を把握できないと道を誤ってしまう恐れがあります。
それを回避するには実践的に様々な音を聴いて把握するしか対処法は無いでしょう。
自分の足下をグリップ出来ないのならスリップしてしまうのは必然でしょう?

かくいう私も良い音とは何かと思い悩み彷徨っていた時期があります。
インターネットのおかげで情報だけは膨大に入ってくるので、いろいろな場所へ行きいろいろな音を聴かせていただくことができました。
生音を聴け、という意見もありますが必ずしも生音が至上の音と成り得ないことも想定しました。

それでもなかなかこれだ、という音には出会えませんでした。
当て所無く彷徨うことにも疲れ果てた頃、都内某ショップでようやくその音に出会うことが出来ました。

試聴させていただいたのは、

VICTROLA CREDENZA 1920年代の蓄音機です。

風のように流れ出る音の波に完全に心奪われていまいました。
身辺のあらゆる物を売り払ってでも購入しようかと思いました。
しかしクレデンサだけだとSP盤しか聴けないので断念しました。聴きたい音楽がSP盤だけで賄えるのなら手に入れていたかも知れません。

そこで私はSPはもちろんのこと、LPもCDもできればmp3でも電気オーディオでクレデンサのような音を再現してみようと決意したのでした。ぐうたら人間の私はこれにお気楽さという要素も加えてみたのですがね。

結果、それでなくとも変わり者と思われているオーディオマニアの中でもさらに変わり者扱いされるひぃ〜のオーディオが形成されていくことになるのです。

奇人?変人?だから何?


とまあ長〜い前口上を述べさせていただきましたが、SP盤の再生は結構良い線いってるかなと思っていた今日この頃、隣の市にある博物館にクレデンサがあると知り、アポをとりSP盤を持ち込んで試聴させてもうことになりました。
ボランティアで経営されているということなので、週に1回の開館です。因みに蓄音機の博物館ではありません。

初め近いということもあり久々のロードレーサーで向かったのですが10km程で前輪バースト。替えチューブも補修工具も忘れてしまった、、、歩いて行くにしろ家に戻るにしろ開館時間に間に合わないのでその旨電話すると時間を延長してくれるとのこと。うう、ありがとうございます。
ウチへ戻り車で再度向かう。しかし今度は近くまで行って地図を風で飛ばしてしまい道に迷ってしまいまう。その旨電話で伝えると近くまで迎えにきてくれました。うう、本当にありがとうございます。

普通の住宅地の中にその博物館はありました。外観は綺麗な一般住宅という面持ち。

メインではない音楽目的できてしまいこころ-苦しく思っていましたが、館長さん--私はその人をこれからは先生と呼びます。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚かる遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。などというのは冗談で、答えは最後の方で明かします。

先生はニコニコしながら、まずはこちらから聴きましょうと奥の部屋を案内してくれました。
中にはいるとメインの膨大な書籍が陳列されているのが目に入ります。




ピアノの両脇にはドイツ製のハイエンドスピーカー。ラックに目をやると厳選された高級オーディオの姿。
う〜ん、ピンぼけ。プレヴューあてにならない。


「クラシックはどうですか」と先生。「このCDP、演奏の粗まで判ってしまうので、ちょっと凄いですよ」先生もオーディオマニアらしいのでちょっと緊張が緩む。


出てきたのはハイエンドオーディオらしい細かい粒子の様な音ががキラキラ跳んでくるような精緻な世界。フォルテでも全くクリップしない。
「ウチではこんな音絶対出せません」と私がいうと、
「ある意味その方が正常」と先生。「時々こういう音が嫌になってあっち(クレデンサ)聴きに行く」と笑う。

ひとしきり聴いて本日のメイン、クレデンサへ。
此処にはもう一つヴィンテージシステムもありましたが今回は未聴。

美しきクレデンサ!(JBLはまあいいじゃないですか・・・)




クレデンサを手に入れた経緯などを伺いながら針などの説明をしていただく。
サウンド・ボックスは別途手に入れられたそうです。
まだまだ調整箇所があるそうですが、それも又楽しみな様でした。


それではと私の持ち込んだSP盤を順繰りに掛けていただく。




OLD MAN RIVER c/w AFTER YOU'VE GONE
CHARLIE VENTURA'S BIG FOUR
私が初めて購入した日本製SP盤。Venturaのホンカーぶりもさることながら若きBuddy Richの壮絶なドラミングにビビリます。ウチではちょっと音量を上げると低音が暴れてしまうのですがクレデンサでは迫力はそのまままにきっちり鳴らします。先生もこのドラム凄いねと感嘆。




SAY YOU'LL WAIT FOR ME c/w MY TORMENTED HEART
SARAH VAUGHAN
初々しいサラがクラシカルな唄い廻しで女心を唄う。先生はかなりお気に召したようで、針を交換してもう一度聴く。倍音の響きがすばらしい。この時点でウチもまだまだなと悟る。残念。




MY HEART IS SO FULL OF YOU c/w I MISS YOU SO
CHRIS CONNOR
おなじみクリスさん!でも先生はサラに比べて妖艶なところがマイナス評価。クレデンサで聴くと低音が出ない。ウチだとちゃんとベースの音がするのに不思議。56年というSP盤後期のプレスの時点で既に何かが失われてしまったのか?




STRANGE FRUIT c/w FINE AND MELLOW
BILLIE HOLIDAY
最後は人類の遺産。至上初のプロテストソング「奇妙な果実」。気楽には聴けないけれどこれははずせない。怒り悲しむのではなくあえて淡々と唄うビリーに感動を押さえられない。私の持っている中でもっとも古いSP盤で再生が一番難しいのです。先生は「奇妙な果実」を最後に掛けよう、とクレデンサへ。その音はもう、上手く言葉に出来ない。鳥肌立ちっぱなし。ウチだとノイズがひどく、高域カットオフしたり色々いじると鮮度が無くなってしまうのに、、、すばらしいしか言えない。





1時間あまりでしたが大変貴重な体験をさせていただき感謝しております。
今度開かれるというJAZZレコードオリジナル盤試聴会にも参加させていただくことになりました。ただいらっしゃるというお友達の方々の肩書きが某有名大学の教授とかすごいことになっているので、アホバカ大学中退のおちこぼれサラリーマンが参加しても大丈夫かなと不安がよぎりましたが、な〜に音楽の前では人は平等だと誰か謂ってませんでしたっけ?謂ってない?あれれ?

まあ、そんなこんなで外も暗くなりおいとまさせていただく段になり、ちょっと世間話をしていてあることが判明します。先生は私の通っていた中学校の先生だったのです。私が入学したときにはよそへ移っていたそうですが、世間は狭いですねって隣の市だからさもありなん、ですかね?


さあ次は学園天国さんと膝栗毛といきますか!
 
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